売れるOEM製造とは
OEM製造において、単に商品を作るだけであれば、お金をかければ誰でも商品を作ることができます。一方、重要なのは、売れる商品を作ることであり、そのためには、どんな売り方ができるか?を商品設計段階から徹底検証してから製造に進む必要があります。
可能であれば、商品設計が決まる前に、できる限り表現したい広告表現をOEM営業マンに伝え、商品設計に反映してもらうのが好ましいでしょう。
そして、ある程度の商品設計が決まった段階では、ランディングページや広告原稿などの作成を想定して、どのような広告表現が可能か?をイメージする必要があります。
特に、通販で販売する場合、こういったクリエイティブのイメージは、不可欠です。
また、商品販売の現場は、必ず競合商品が存在します。商品設計の段階で、イメージする競合商品を明確にするのは、敵のことをよく知ってから商品を作った方が競合商品に負けない展開が可能だからです。
さらに、市場は、常に動きます。今売れている商品も、将来的には競合が増え、売れなくなってしまう可能性も秘めているのです。そういった市場動向も加味して、OEM製造を行っていく必要があります。
実は、こういった市場・競合分析をしっかり行って、どれだけ商品設計に落とし込めるかが売れる商品作りの成功の鍵だったりするのです。
市場分析
市場分析を行う場合、一般的に市場規模やトップシェア商品の分析が行われます。一方、市場分析を行うにあたり、参入障壁や商品の適正原価率なども分析するため、素材のライフサイクルを調査することも重要になってきます。
市場分析での調査項目
- 素材の市場規模
- 市場での商品数
- 素材のライフサイクル
- トップシェア3商品
- 価格
- 配合量/含有量
- 想定される原価率
- 素材取り扱い原料メーカー
素材のライフサイクル
導入機
認知度が低いためコストと時間が必要となる。
成長期初期
認知度が高まり注目され始め、商品化も活発となる。
成長期後期
認知度が高まり多くの商品化がなされ、市場が成熟していく。
成熟期
多くの人が名前を知り市場規模が大きくなり競争が激化する。
流行、廃りがあるように健康食品の素材にもライフサイクルがあります。
導入期の素材を用いた商品は、認知度を高めるため、成長期以降の素材より多くの広告費(告知コスト)を必要とします。一方、ネットワークビジネスや宣伝講習販売などクローズドな販路では、通販や量販店で販売されていない素材として、重宝されます。
成長期初期の素材は、まさに狙い目な素材です。市場規模の成長と共に、販売量を伸ばしやすい素材です。メディア等での露出も増え始めるため、単品通販事業には、適した素材です。成長期後期に移行せずに、市場規模の伸びが停滞してしまう素材も存在します。
成長期後期の素材は、競合が増え価格競争が厳しくなり始め、市場規模が一気に大きくなる素材です。認知度もかなり高まった状態の素材です。大手の総合通販サイトでも販売が開始され始める素材です。
成熟期の素材は、量販店でも商品が並ぶような、まさに誰でも知っている素材です。数多な商品が存在し、価格競争も激化しています。成熟期素材として、ビタミン、ミネラル、ビルベリーやコラーゲンなどが代表例です。
競合分析
競合分析は、市場分析より、さらにマクロな視点で調査を行います。
まずは、ターゲットの競合を設定し、その他の競合とのポジションを調査いたします。そして、ターゲットの競合が勝っている理由(評価されている要素)、その他競合に負けている理由などを調べていきます。
また、ターゲットの競合商品の売上規模やその他競合数より、その市場性を調査していきます。なお、販売している販路や利用している広告媒体なども調べておくと良いでしょう。
競合分析を行いながら、実際に商品設計を進めていく場合、商品設計を具体的に行いつつ、どんなクリエイティブが謳えるか?を認識しながら進めていく必要があります。そして、そのターゲット商品に販売でぶつけた場合、勝てる見込みがどれくらいあるか?を評価して、商品製造を行って市場に新規参入するか?を決定する必要があります。
原料クリエイティブ
競合分析を行ってくると、消費者に支持されている要因として、素材に関連するクリエイティブも導き出されるでしょう。この素材クリエイティブは、ある特定の原料に限定されるクリエイティブであることが多いです。
例えば、極生プロテオグリカンという素材クリエイティブは、一定の分子量(240~360万Da)を保持している原料に限定される原料クリエイティブです。すべての原料で表現できるクリエイティブではありません。
類似した原料クリエイティブを利用したい場合、表現するための原料を探し出す必要があるのです。
一方、こういった原料クリエイティブは、販売会社と原料メーカーで創造されていることも多々あり、競合と同じようなクリエイティブ表現ができないこともあります。そして、この原料クリエイティブが競合との差別化ポイントとなっており、競合商品の真似されない商品開発へと結びついていることもあるのです。
また、原料メーカーと協力し合い、競合を上回るクリエイティブ表現が創造されるケースもあります。数や量のクリエイティブで競合を上回るようなクリエイティブ表現や特徴のあるストーリーのクリエイティブ表現などを創造することで、競合商品との差別化を図るのです。
大量の原料購入を求められるなど、非常にハードルが高いですが、究極は、競合に勝てるような原料クリエイティブが表現できる特注原料を製造してもらうという方法も存在します。近年、大手企業(販売者)では、こういった競合に勝てる原料を自社製造もしくは委託製造するケースも増えております。
次の勝てるイメージの落とし込みでは、勝ちを演出する原料クリエイティブ利用の可否も重要になってきます。
勝てる商品イメージの落とし込み
市場・競合分析を行い、勝てる商品イメージが沸いてきたら、そのイメージを商品設計に落とし込みましょう。そして、商品設計をOEM会社に伝え、コスト的に現実的な商品設計であるか?を検証いたしましょう。
机上の空論で売れる商品は、簡単にイメージ可能です。でも、その売れる商品がコストや剤形の容量、その他要因などによって、製造できないことが多々あります。
理想と現実を近づけていくような商品設計調整が必要になります。
また、その設計調整において、適正原価率などが市場状況と一致していないケースも多々あります。競合商品の原価率が想定上に高かったというケースもあります。
例えば、過去に推奨された適正原価率12%というのは、独占的なオンリーワン素材を配合し、2000年代前半の広告費用対効果で展開することを想定した原価率です。実際、2000年代でも、独占的なオンリーワン素材の存在を加味せず、12%の商品原価率で展開して失敗した会社は、数多く存在します。
特に、量販店には、原価率が40%越えるような成熟期素材の商品が数多く並んでいます。素材のライフサイクルも加味して、適正原価率の設定する必要があるのです。
なお、2021年8月に改正された薬機法が施行され始めたことにより、広告規制が強化されています。今まで可能だった広告表現や売り方(アフィリエイト広告などを介した薬機法逃れなど)ができなくなってきております。近年は、そういった状況も加味して、商品設計を決定していく必要が出てきているのです。
OEM製造情報の権利
最後に、OEM製造情報の権利について。
冒頭のOEM製造の説明の通り、健康食品サプリメントのOEM会社が行っているのは、原則、ODM製造です。
OEM製造の場合、大まかな商品設計だけでなく、細かい原料(メーカー、番手など)などの指定を行う必要があります。一方、健康食品サプリメントのOEM製造の現場では、そういった商品設計や原料選定をOEM会社が行っています。そのため、実際に行われているのはODM製造であり、そういった商品設計などのOEM製造情報は、すべて権利がOEM会社に帰属するのです。
例えば、錠剤で賦形剤の選定や配合率を設定するだけでも、ODMになり、権利は、開発を行ったOEM会社に帰属します。
もちろん、選定され提供された原料情報も、OEM会社に帰属します。
OEM会社の中には、見積書の中に、どこに商品設計の権利が帰属するかが明記されている場合も少なくありません。また、ODM契約書の締結後に案件を進めるOEM会社も増えてきています。
なお、下請法関連の裁判の判例において、争点は、OEM会社の労力やノウハウ提供度合いになっています。したがって、OEM製造を委託する会社が余程の商品設計技術を有していない限り、ODM契約書(秘密保持契約書)の有無に関わらず、OEM製造情報は、OEM会社に帰属してしまうのです。
資格:博士(水産学)
経歴:株式会社アンチエイジング・プロ COO(常務取締役)
順天堂大学医学部 総合診療科 研究生
クリニカメディカ学術顧問
SloIron Inc. 技術顧問
2003年、現在の東京海洋大学(旧 東京水産大学)にて、今も世界で大注目されているマイクロプラスチックなど海洋プラスチックの研究で博士号を取得。
その後、化粧品会社(現顧問先)の臨床試験・学術担当として、健康食品・化粧品の業界へ飛び込む。世界中から優れた機能性食品原料を輸入し、大手企業を始めとした様々な企業に原料供給しつつ、国内で数多くの原料の市場開拓を行う。赤ワイン由来レスベラトロールが市場開拓した素材の代表例。
2011年3月に株式会社アンチエイジング・プロを設立し、レスベラトロールやジオスゲニンのトップ原料メーカーとして、現在も様々なオンリーワン原料を供給し続けている。また、大学や医療機関と連携しながらヒト臨床試験なども実施し、継続的に原料の研究開発に勤しんでいる。